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永井ギャラクシー つくる部

関西を拠点とするウェブ制作チーム。あらゆる“つくる”にまつわる日記。つくる部部長(つ部長)が担当します。好きな時に更新します♪

佐野研二郎さんの会見で、デザインの勉強をさせてもらったことと気づいたことまとめ

つくる部部員のくまです。

世間は何やらオリンピックのエンブレムで騒がしいなぁ、デザイナーが会見開く騒ぎなのかへー・・・と他人事のように思ってましたが、よく考えれば、これは超一流のデザイナーが超一流の仕事を、どんなコンセプトで、どんなセオリーで、どんなプロセスで完成させたのかを知ることのできる稀にみる機会ではないか!

ということで、(模倣かどうかは置いといて)佐野研二郎さんの会見動画を拝見し、デザインのおさらいと勉強をさせていただき、そして後半には、自分なりに気づいたことをまとめてみようと思います。


五輪エンブレム問題 制作者の佐野研二郎氏が会見 - YouTube

 

佐野さんの解説まとめ

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フォント "Didot" と "Bodoni"

普及しているベーシックなフォント、つまり伝統的に洗練されたフォントを基にしているとのことです。この説明を聞いただけではへー、としか思いませんでしたが、動画を見おわる頃にはなるほどと感心していました。その理由は後半に。

 

強いとされる正円・正方形・赤と、絶対的で特別な色(白、黒、金、銀)を使っている

エンブレムの"T"の部分は正方形であり、向かって左上と右下のアールで、亀倉雄策さん制作の1964年東京オリンピックポスターの日の丸を浮かび上がらせたとのことです。亀倉さんのポスター、どんなものかと画像検索してみたら、フチいっぱいいっぱいまで正円が広がったデザインで佐野さんの意図するところが理解できました。

自分はいろんなウェブ制作会社に勤める中で、正円や正方形はデザインにおいてとても強い要素だということを学びましたが、このエンブレムの中にはその両方が入っているわけですね。

そして色に関してですが、赤もとても強い色とされます。他に黒や白も使われてますが、混じり気がないという意味ではこれらも特別な色と言えるかも知れません。そしてメダルをイメージさせる金・銀もとても特殊な色ですね。この動画を見て、強くシンプルで混じり気のない要素ばかり使われてるんだなぁということがわかりました。

 

グリッドや揃えなど、デザインの基礎も

9分割(3×3)って言ってましたが、グリッドですね。
そしてそのグリッドと、いつもの五輪マークを対応させて、佐野さんがデザインしたエンブレムの各要素と揃えてるとのこと。こういう揃える部分を見つけられるのもデザイナーの腕なんでしょうね。具体的には下記の2点です。

 

五輪マークの黒の輪と、真ん中の縦の黒の帯(Tの柱の部分)を揃えている

五輪マークの上真ん中の黒い輪と、自身が制作したTの柱の黒い帯の部分を対応させてるとのこと。言われるまで気づきませんでした。(ついでに五輪の真ん中が黒ということも覚えました。)

 

五輪マークの赤の輪と、向かって右上の赤を揃えている

そして五輪マークの向かって右上の赤い輪と、Tの右上の赤い丸も対応してるとのこと。(この赤い丸、後でまとめますが、何重にも意味が掛かっててすごいです)

 

向かって右上(=左上)の赤丸は鼓動(心臓)を意識している

佐野さんさらっと言ってますが、五輪の赤の輪と揃えつつ鼓動も意識している、つまり心臓の位置である左上(向かって右上)に配置してるとのことです。

ここからは自分の憶測ですが、企業さんのデザインなどをするとき、よく上司から右肩上がりにしろと言われました。写真を傾けるのも右肩が上がるようにとか(売り上げが右肩上がりというゲン担ぎです)。説明にはありませんが、もしかしたら日本を象徴する赤丸を向かって右上に置いたのにはそういった意味も込められてるかも知れません。

 

オリンピックとパラリンピックで "=(イコール)" になる対のデザイン

オリンピックとパラリンピックで同等という意味も持たせるために、両方のエンブレムを並べたときに"="が浮かび上がるようにしたとのこと(それぞれの真ん中の縦の部分)。そして元になっている設計図(エンブレムのアウトライン)も全く同じとのこと。

こういうの聞くと、そのデザイナーさんが普段どんなことをどれだけ考えてるかがわかります。

 

他の文字も含め、様々な媒体での展開(進化)を前提にデザインされていた

動画などいろんな媒体での展開を前提に、他の英数字もデザインされていたとのこと。シンプルな図形と色の組み合わせでこれだけの数がデザインされていたんですね。

ここでこのデザインを使ったムービーが流されますが、最後に両方のエンブレムの心臓の位置に赤丸が配置されるのが印象的でした。

 

亀倉雄策のデザインのDNAを引き継ぐ

冒頭でベーシックなフォントを元にしたとおっしゃってましたが、フォントだけでなく、亀倉雄策さんによって制作された前回のオリンピックポスターのデザインも踏襲しているとのことです(1964年のDNAを引き継ぐという表現をされてました)。

 

向かって左上のアールと右下のアールで調和(バランス?)を取っている

向かって左上のアールと右下のアールで亀倉雄策さんの正円を浮かび上がらせるともおっしゃってましたが、調和させてるともおっしゃってました。

ウェブデザインでもよく動線(ユーザーの視線の流れ)を意識しろと言われます。横書きの文章などでは、左上から右下に視線が流れるのが自然なので、その両方に重みのあるものを配置すると安定するとも言われます。

このアールも、左上と右下に配置することで安定させる意味もあるのかなと思いました。

 

解説全体からわかったことまとめ

ということで、最後まで見て自分なりに理解したことを以下にまとめると・・・。

 

赤丸が何重にも意味を持っている(掛かっている)

日の丸、鼓動、亀倉雄策さんのデザイン、五輪マークとの対比(もしかしたら右肩上がりの日本も?)等々、この赤い丸が何重にも意味を持っていることがわかりました。ひとつの記号にこれだけ意味を持たせられることはなかなかありませんよね。

 

先人が作ったもの、淘汰されてきた良いデザイン、シンプルさの尊重

ベーシックなフォントや亀倉雄策さんのデザインなど、先の時代の人が作ってきたものを踏襲されているという印象を持ちました。というか、シンプルな図形と色と先人のデザイン、それだけを使い、手を加えるのは最小限にして作られたと言ってもいいかも知れません。

自分の場合、何か自分の手を加えないと手抜きのような気がして、こね繰り返すのがデザインだと思ってた時代がありましたが、今なら佐野さんが素材を大切にされる理由が少しはわかるかも知れません。

プロの料理人が良い素材を使って作る料理のようなものでしょうか。

 

 

ところで余談ですが、(ただ純粋にデザインの上で)日本の国旗は白地に赤丸だけで「日本」と認知させるわけで、なかなかすごい国旗だなぁと思います。あのシンプルなものを国旗として認定する勇気もすごいし、「赤い正円」というデザイン的に強い要素を、よそと被らずに日本の記号とできたこともすごい。

 

今回このような騒動になりましたが、もしかしたら逆に、デザインというものが浸透するいい機会になるといいなと思います。今はネットやアプリケーションなど環境が充実しているので、クリエイティブな活動をしている人も昔より多いし、今後よりデザインというものが身近になっていくのかも知れません。

出来上がったものが全てだという考え方もあるとは思いますが、自分としては、こういった中身を知ることができてとても有意義でした。

模倣があったか、似ているかの話はこのブログのテーマと合わないので書きませんが、いろいろ学ばせていただいた佐野さんには感謝と応援の気持ちを送りたいと思います。

 

ということで、今後はベルギーのデザイナーさんが教えてくれた Pinterest を見て勉強しようと思います。